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04月16日
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水難後 真情あり

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台風18号の襲来により豪雨が関東と東北地区に水害をもたらしたばかりでなく、茨城県内を流れている鬼怒川が常総市で堤防決壊を引き起こした。洪水の水が引いた後、慈濟ボランティアは14日から被災者の家の片付け等、賑災支援活動を行った。

ある日、助けを求める一本の電話がきた。日本に嫁いできて三十数年の森優妃と家族は鬼怒川決壊口から四キロ離れた常総市若宮地区に住んでいた。市役所から避難指令が出された十日夜、ご主人の森孝司さんは「四時頃避難所に行ったが、家に残されたペットが心配となり一旦帰宅。その時、周囲をみたら、堤防辺りは少し浸水したが大したことはないと思った」しかし、再び戻ってみた時には、堤防決壊後浸水された泥だらけの家だった。

鬼怒川の傍に住みついて三十数年、堤防決壊は一度もなかった。今回の浸水で、一階には水が一メートル迄達し、水が引いた後は床一面隙間無く泥だらけの状態。木造の家の一階に置かれたテーブル椅子や冷蔵庫などは一瞬にしてゴミとなった。

氾濫した川水に大量の泥砂と枯れた木の枝等が混じっていた。「市役所の方が消毒用の粉を撒いてくれた」と、床が剥がれ床下の基礎部が露出された所を指して、森優妃が申し訳なさそうな顔で片付けに駆けつけたボランティアに言った。「本当は迷惑をかけたくなかったけど・・」自分と家族で頑張ってきたけど、元々駐車場であった庭にゴミの山となった様子をみて、すべてをやり直されなくちゃならないと考えると思わず涙ぐんでしまった。

森優妃は慈濟メンバーに加入して六年となる。いつも庭に植えた野菜などを支部に送っていた。家族同様の慈濟人の顔を見た時、思わず涙がぽろぽろと流れた。一階に置かれた家財道具を失った悲しさより、ご主人と一緒に祈福会に参加した時に貰った上人の「福慧紅包」が水に浸かった事がもっと悲しかった。

二十二日、常総市の水道・電気の供給が回復し、七名のボランティアが炊飯ジャー、魔法瓶、エコ毛布や果物等を持って、再度彼女と若宮地区の住民を訪ねた。

お向かいに住んでいる彼女のお姉さん遠藤玲子さんも慈濟の会員で、家の基礎部分が水にえぐられるほどに被害状況が最も酷かった。「自転車三台も流され見つからない」と遠藤さんが訴えた。建てられた三十数年の自宅が泥水に壊され、一家は避難所住まいをせざるをえなかった。

日本支部執行長許麗香より見舞金が送られた。「上人からの言い付けで、会員に必ず祝福の意味合いを含まれている見舞金を差し上げること。受け取ってください」。このような「祝福」を、近隣の逆井正夫さんへも届けた。

一人暮らしの逆井正夫さん、被害状況もかなり酷かった。ボランティアが見舞金や祝福の飾りものを差し上げた。「これが花蓮本部證嚴上人の気持ちです。私達が代わりにお渡ししますので、どうぞ受け取ってください」。「ハイ。頑張ります」と逆井正夫さんの目を赤くして答えた。

「同じ被害を受けた方々は互いに励まし助け合えば、きっと乗り越えるはずです」。森優妃もボランティアと一緒に「三十年以上、生きよう。一緒に頑張りましょう」と逆井さんを励ました。家も家財も壊されたが隣同士の労わり合いがあれば、力になり希望になる。天地和平、鬼怒川が怒鳴りもせず、氾濫せずと心より祈ります。

文/陳靜慧
訳/維拉