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12月12日
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美味しい柳丁の生産・下

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飲んでいるのは果汁か
あるいは砂糖水か

政府が買収した柳丁(リュウディン)の中でグレードの高いのは果汁を搾るのに使われる。雲林県褒忠郷にある新湖合作農場はかねてから高い品質管理の下に柳丁ジュースを生産してきた。柳丁は皮を取り除いてから果汁を搾り出した後すぐそのまま冷凍保存する。調味料と添加物は一切使わない。正真正銘のピュアな柳丁ジュースである。

市販のオレンジジュースは大部分が輸入の濃縮ジュースに水を加えて薄めた、いわゆる果汁還元ジュースで、本当の果汁が含まれている比率はまちまちである。果肉を含んでいると宣伝している銘柄もあるが、多くは果汁の割合が僅か十%に過ぎず、残りは水を加える他に味と見た目を良くするために糖分と色素を入れている。

奇妙なことに、これら薄められて風味が落ちた果汁は、搾りたての新鮮な果汁より高い値段で売られている。飲んでいるのは本当の果汁か、あるいはただのオレンジの味のする砂糖水か、消費者は見分けられるだろうか?

オレンジは国際貿易では大量物資に属し、主にジュースの生産に使われる。国外の濃縮ジュースを輸入して還元加工をしたジュースと、国内産の柳丁を使って搾ったジュースは、コストの差が一対八と甚だしい。だから国産の柳丁を使ってジュースを作ろうというジュース工場はほとんどない。今年、政府の買収した柳丁を受け入れた工場は三カ所だけだった。

つまり、消費者が果肉のある、水で薄めていない正真正銘の柳丁ジュースを飲む一番の良い方法は、各家庭で自分で搾ることに尽きる。「もし皆が毎日一杯ずつ自分で搾った柳丁ジュースを飲んだら、健康にいい他に、柳丁の売れ行きも滞らなくなる」と主張する雲林県農協の謝淑亜総幹事は、イベントや集まりのチャンスがあるごとに、新鮮な柳丁ジュースを飲むよう皆に勧める。

「柳丁は健康の宝だ」と謝さんは言う。果肉は植物繊維とビタミンC、カリウムを多く含み、ガンを予防する、活性酸素を抑える、悪玉コレステロールを少なくする、宿便の排出を促すなどの作用があり、赤ちゃんや病人が食べても差しつかえない。皮では栄養価の高いジャムや酢も作れる。

「ベータカロチンは身体にいいということはみな知っているので、トマトが売れないことは今までなかった。それに比べて、柳丁の栄養価を知っている人はあまりいない。その高い栄養価が値段に反映されていない柳丁は、工程能力指数(CP値)の最も高い果物である。今この時に安くて美味しい国産の旬の柳丁をたくさん食べなければ損だと知って欲しい」と謝さんは強調した。

小さな太陽の輝きを取り戻せ
柳丁農家が心待ちにしていた景気の回復が今年も期待はずれとなり、いたる所で失望の声が聞かれる。しかしその中で他の農家と違う見方を持っている農家がある。「柳丁には素晴らしい前途が待ち構えている。その黄金色の丸い果実は太陽のように光り輝き、人々に良い果報をもたらす」と自信たっぷりに話すのは斗六の柳丁農家の林淑玲さん。朗らかな笑顔で私たちを柳丁畑へ案内してくれた。確かに、鈴なりに実っている柳丁は、一つ一つが小さな太陽のようで、まるで林淑玲さんの新しい人生を照らしているようだ。

林淑玲さんはもともと中学校の国文教師だった。定年退職後に柳丁の栽培を始めたが、農薬がいやで、有機栽培を懸命に勉強した。「初めは幼稚園の子供のように何も知らず、たくさんのことを学ばなければならなかった」。今年、林淑玲さんが出荷した柳丁は「N.D.」の証書をもらった。それは農薬の残留が検出されなかった証明で、三年間にわたる努力が報われたのである。

農薬も化学肥料も除草剤も一切使わない果樹園を荒らすあらゆる病虫害に、彼女は一人で対処しなければならない。果樹園には木の根元に穴を掘った跡がたくさん見受けられる。それはホシカミキリの幼虫を駆除した証である。

「幼虫は蚕に似ている。根元に潜り込んで木を蝕む」。彼女は一本の果樹の根元に怪しげな木のくずを見つけた。のみと針金で掘り、座ったり仰向けやうつ伏せになったりといろいろと姿勢を変えて虫を捕まえようとしたが、なかなかうまくいかなかった。

これが有機栽培に携わる農民の姿だ。消費者の健康と環境保全のために、彼らは人一倍苦労して汗を流して、消費者が安心して食べられる果物を育てているのだ。

努力は報われるものである。林淑玲さんの畑から採れた柳丁は一斤(六百グラム)二十元で売れる。従来の農法で育てたものより値段がずっといい。

また、柳丁の品質向上のために環境汚染と闘っている人たちもいる。台南県東山郷嶺南村の村民がそうである。「村人のほぼ全部が柳丁を植えている」と陳顕茂村長は言う。質素でシンプルな生活に満足しているこの村に二〇〇一年、環境アセスメントを通過した永揚埋立処分場が設置されるとの報が入り、平穏だった村はにわかにざわついた。村長夫人の洪龍鳳さんは、村を通る亀重渓が汚染されたら農地はダメージを受け村民の生計は危うくなると言う。

さらに深刻な問題は、埋立処分場は烏山頭ダムの水源からわずか数百メートルしか離れていないことだ。もし重金属などの有害物質が地下に浸透しダムの水と混ざったら、台南県市の人々の生活用水の安全が脅かされる。「これは子孫に禍根を残すことになる」と陳村長はことの重大さを認識して、村民を動員して「烏山頭ダムを守れ」と陳情と抗争を始めた。台湾環境連盟の前会長である陳椒華さんも、埋立て場が地下水汚染の原因になるとして調査に協力した。

嶺南村の村民は三百人あまりで、そのうち二百人が六十五歳以上である。ひたすら百姓として生涯を過ごしてきたお年寄りが今回の抗争運動の主力メンバーである。四十日間昼と夜を徹してかわりばんこに座り込みをしたり、十二日間かけて台南県下三十一市町村を行脚してこの問題を訴えた。暑い日、寒い日、雨の日を問わず、声がかれるまで「私たちはゴミ埋立処分場はいらない、私たちは汚染された水を飲みたくない、私たちがいるのはきれいな山と川だ」と叫び続けた。

陳椒華さんによると、政府の環境保護署の専門家たちは、北勢坑の断層が埋立て場を通っていることを確認しているといい、県庁は速やかに埋立て場の建設許可を撤回すべきであると指摘する。彼女は断層の水が湧き出ている所へ私たちを案内した。「以前まだ水道水がない時は、村民はここへ来て水をくみとりました。このように湧き水が豊富な場所にゴミ埋立処分場の設置を許可するとは、行政当局はまったくどうかしています」。

今年、嶺南村が力を入れているのは、「断層泉(だんそうせん)で育てた柳丁」のアピールである。これは環境保全の一環でもある。「ゴミ埋立て処分場の設置反対が環境に配慮した行動であるからには、果樹を植える環境についても信頼を得ることも目標だ」。この信念のもと、陳顕茂さんは率先垂範して、農薬と化学肥料の使用をできるかぎり少なくし、除草剤を噴霧しない栽培を始めた。そして近い将来、全村が完全な自然農法になるのを望んでいる。

嶺南村の柳丁に話が及ぶと、謙遜した人柄の村長さんには珍しい自信たっぷりの表情になる。「この当たり一帯は地形がよくないため、果樹も生きることに懸命。そうして実った柳丁は果肉がぷりぷりして美味しい。断層泉の水で育てた柳丁も酸味を抑えるなどの化学処置を行わない。食べた時に酸っぱくて後に甘くなるのが柳丁の本来の味だから」。

踏んばって生きている果樹と肉づきのよい果実は、嶺南村村民の郷土を守ろうとの信念と行動のように、人々に好ましい印象を与えるであろう。

生産過剰と品質が安定しない現状の下、嶺南村が有機柳丁生産村の名のりをあげたら、この分野の産業全体によい結果をもたらすに違いない。さらに、環境保全のためにゴミ埋立て場建設に反対する村人の行動も、いつの日かよい結果となることを期待する。はじめは酸っぱくて、その後甘さが広がる柳丁の風味のように……

経典雑誌一三八期より
文・蔡佳珊/訳・金華/撮影・徐安隆