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04月19日
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台湾の第四の奇跡

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【記念特集】

一九八〇年代の末期、台湾の人たちは精神的に空虚な時代を過ごしていた。證厳上人は複雑で深奥なる宗教の学説理論を、最も簡単な言葉で解説した。誰にも分かる平易な言葉を集めた『静思語』という本を出版し、台湾の社会に大きな影響を及ぼした。

――厳長壽(亜都ザ・ランディスホテル総裁)

最近、幾人かの友人と台湾の未来について話し合う機会が幾度かあった。

過去六十年来、台湾は農業、製造業、さらに高度科学技術産業が発展し、貧しい社会から豊かな社会に変った。これら三つの奇跡を次々と体験し、人々は「台湾はお金が足下にあふれるほどある」と例えた。金銭的には台湾は確かに誇り高い成績を成しとげた。

しかし、台湾の人々の心は寂寞として空虚である。これから先はどの方向に向って発展すべきか? 我々は再び金銭で計るべきではない。あるいは国民総生産(GDP)を発展の目標にしてはならない。台湾の第四番目の奇跡は、中華圏の誇りとなる文明の奇跡を築きあげることだと私は思う。

台湾では多くの偉大な宗教家や芸術家が人生の無常を説いたり、自らを反省するよう導いている。その中で、社会を安定させるのに一つの大きな力となっている源は、宗教のリーダーたちである。

宗教の起源は一種の神の威力にある。その後、人類は無常を予知できないので、神が心霊を安定させるための手段となり、もっぱら自分のために神仏に祈るようになっていった。人々が祈るのは、自分の家族に対する加護や富、または地位の獲得であった。

このような社会風潮の中で、二十年前、證厳上人は複雑かつ深奥な宗教学理論を、簡単に実行できる道理として平易に説いた。誰でも聞いて分かる易しい言葉で、『静思語』を出版し、数千数万の人々を感動させ、台湾の社会に大きな影響を及ぼした。

台湾で世界的ブランドをつくる
證厳上人のような偉大な宗教家が、大衆に仏法を諭されるので、人々は欲望を少くし、生活を簡素にし、心霊の安定に努め、己の身を修め、人生における災難やさまざまな難題を受け止めることができた。

法師は私たちに、身を修めるだけでなく、一歩進んで社会を良い方に変えるよう実践すべきであると諭される。それ故、台湾や世界各地で災難が発生する度、慈済のボランティアはいつも真っ先に第一線に駆けつけ、苦難にある者を支援する力となって人々を感動させる。

台湾は幸いにして、多くの人々が證厳上人の影響を受け、浄財を献金するのみでなく時間を割き真心込めてあらゆる場で黙々と奉仕している。皆、心を清め怨恨を捨て、人生の無常を受け入れるなら、心霊が安定する。それで台湾は混乱の中にあっても平穏を保つことができ、依然として進むべき方向を保持している。

台湾にもし、世界に誇れる「ブランド」があるとすれば、それは慈済が代表できると思う。慈済人は宗教間の違いを超え、人類への愛をもって世界を抱擁し、一人ひとりに心配りする。簡単ではあるが、深い意味が込められた『静思語』は、各国語に翻訳され、全世界が享受できる心霊の良薬となっている。

今この時を把握し
永恆につなぐ

私は今年六十歳になる。人生の後半に入り、再び自分の価値を思考する時期にさしかかった。

私は自分の人生が豊富なもので、多くの経験を積んだことに感謝している。私は今、その経験を社会の人々と分ち合って影響を及ぼしたいと思う。この点、法師の言われる「奉仕」を実践できるかもしれないと考えている。

證厳上人はおっしゃった。「一生の中、人があなたのしたことを覚えているよう要求してはなりません。また、あなたに感謝することを求めるのではありません。あなたのした全てのことはもう過去のこととなりました。決して自分の未来がどうなってほしいか、祈ってはいけません。今現在の一つひとつのことに全力を尽くしてやり遂げれば、人生は有意義であり、最もよい役割を果したことになります」。

『静思語』には難しい文字や分からない言葉がない。社会の各層や領域の人々全てが読んで、生活の中で体得し応用することができ、自分の心の中の迷いに対する答を得ることができる。

私は『静思語』の「今この時を把握する。刹那は永恆である」という一句に同感する。過去にどれほどの成就があっても、それは過去のことである。毎日そのことを追憶しても何の価値もない。また、未来もいくら考えても計り知れないものである。今この時こそ永恆なのだ。事の始めなのである。

人生において我々は日々無常に対応しなければならない。人は自分の全ての時間を社会に奉仕し、一刻一刻を把握できるよう学び、悔いのないよう努めることが人生の最もよい意義であると思う。


口述・嚴長壽/整理・洪麗莉、楊宗恩
訳・重安/撮影・陳李少民