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08月23日
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一杯のおじや

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【国際援助・北朝鮮】
三十八歳の張英淑(チャンヨンスク)は両手で一杯のトウモロコシと野菜でつくったおじやを手にし、台所の前で私に写真をとらせました。この一杯のおじやは外で力仕事をしているご主人のお昼ご飯だといいます。

「お昼ご飯は食べましたか」とたずねました。地方の役人に付き添われて食糧問題の視察に来た私たち外国人の一団に向かって、彼女ははっきりした返事はせず、あいまいに言葉をにごしました。

役人は英淑がこれまで外国人に会ったことがなく、どう対応すればいいのかわからないのだと説明しました。でも英淑の憂鬱な眼差しと、口元がひびわれ、見るからに栄養失調だと分かるその姿から、彼女が昼食をとったかどうかは想像に難くありません。英淑の状況は別に特別ではありません。英淑の住んでいるこの辺りだけでなく、北朝鮮全域にわたって同じ様な状態で、深刻な食糧不足に陥っています。



アジアの北東、親指のような形をした半島が中国大陸から突き出ています。人工衛星から夜間撮った写真で見ると、両端は明るく、中間は真暗で、あたかも黒闇の海が天地の間に溶け込んでいるように見えます。

これは朝鮮半島の北部はエネルギー欠乏のため省エネが実施され、夜は燈火管制のため真っ暗闇となっているためです。朝鮮民主主義人民共和国の位置する所で「北朝鮮」と略称されています。

面積十二万五百平方キロ、人口二千四百万(二〇〇九年)。北朝鮮は、世界で少数の社会主義国家の一つです。国益と民族の尊厳を最優先することを国是としています。長年にわたり食糧欠乏の危機に瀕していますが、北朝鮮政府は容易に国際社会からの援助を求めることをしません。

その北朝鮮が、最近、慈済ボランティアの訪問を要請しました。

連年の不作で苦しい国民の生活

毎年秋から冬にかけて、北朝鮮では大麦と小麦の作付けの季節です。小麦は雪に根の保護をしてもらう必要があります。そして雪が融けると水分が根にしみこみます。けれども昨年は厳冬で、低温ではありましたが雪が降りませんでした。そのため土層が地下八十センチまで凍結し、農作物は凍死し、生産量がとても低い状態でした。

夏季の主な農作物であるトウモロコシと水稲は、今年六、七月に雨が多く降ったため気温が低く、その上適度な日照が得られなかったので育たず、収穫が得られませんでした。そして八月には台風が訪れ水害が発生しました。こうして全国的な食糧不足の危機に陥りました。

今年、北朝鮮は国外から三十二万五千トンの食糧を輸入して国内の需要に当てる計画でした。ところが、各国の輸出制限と食糧価格暴騰のため(大麦は六十~七十%、トウモロコシは四十%の値上がり)、購入を二十万トンに縮減しました。

一月から五月までに買い取った食糧は僅かに十一万九千五百トンで、とても需要に追いつきません。北朝鮮の国際貿易促進委員会は慈済に緊急要請を行いました。内容は「黄海北道(ファンヘプクト)」の麟山郡(リンサングン)、谷山郡(コクサングン)と「平安南道(ピョンアンナムド)」の平原郡(ピョンウォングン)、大同郡(テドングン)等の四郡を範囲とし、援助の対象は十六歳以下、六十歳以上の者、及び妊産婦、延べ四十四万人で、一人当り毎月十五キロ、二カ月分の食糧を援助してもらいたいという希望でした。

栄養失調にかかる子供たち

今年の八月二十二日~二十六日の間、慈済災害現地調査グループは北朝鮮政府の案内で被災地を訪れました。

麟山郡では張英淑に会い、米がなく炊事できない状況を目にしました。谷山郡では六十七歳の宋春福(ソンチュンフ)一家が茶碗一杯の雑穀を三人で食べているのを目にしました。まだ歯が生えそろっていない幼子が、トウモロコシの切れ端をかじっていましたが、かたいトウモロコシの粒はびくともせず芯にくっついたままでした。

体は小さく頭ばかり大きな子が保育園の保母さんに抱かれていました。保母さんは、以前は幼児の昼食が毎日学校から無料で提供されていたと話しました。食糧不足により、大分前から給食が停止されていました。昼時になると、親が子供を連れて帰って家で食事をします。園児十七名の中わずか三名だけが弁当を持ってくると言いました。

食糧不足による営養不良は、特に子供への影響が深刻です。黄海北道の麟山郡病院、平安南道の人民病院小児科の患者は、食糧不足による栄養失調に陥っており、さらに他の病気を併発しています。免疫力が低下し風邪にかかりやすく、悪化して肺炎や腹下し、皮膚病、脱毛などの症状にかかり、ひどい場合は命取りになりかねません。

病院ではビタミン剤、消化剤、消炎剤、さらに乳製品が欠乏しているため、子供たちに治療の施しようがありません。唯一の方法は濃度二十%のブドウ糖で病気の子供たちに点滴を打つのみだと医者は言いました。

自然災害
稲熱病がもたらした変化


北朝鮮の食糧はすべて共同農場で生産され、収穫は国家が統一して接収し、その後国民に配ります。

今年から労働者一人当りの毎日の食糧分配量は二月から四月中旬までは四百グラム、四月下旬は三百五十グラム、五月は百九十グラム、六月から百五十グラムに減らされて、規定の半分を下回りました。

北朝鮮の食糧不足は最近始まったのではなく、国際政治の変化は別として、直接的な原因としては天候異常、極寒による冷害、洪水、旱魃、さらに台風といった自然災害に、この十数年来絶えず襲われています。

一九九四年末から立て続けに訪れる自然災害は農作物に深刻な影響を与え、慈済は一九九七年から二〇〇九年までに合わせて九回、援助の手を差しのべました。

一九九七年十二月、慈済は初めて冬の衣類と民生用品を贈りました。一九九九年三月から七月には化学肥料を数回に分けて贈りました。その結果、産地の生産量が激増し、次いで四万あまりの世帯に二カ月分のお米を贈りました。

特殊な国情により、国際組織の援助はこれまで港で簡単な贈与式を行うだけでした。しかし一九九九年十一月、北朝鮮は慈済の五度に及ぶ援助で示された誠意と尊重の態度に感ずる所があったのでしょうか、慣例を破って農民が慈済ボランティアの手から直接援助のお米を受取ることを許しました。

国外のデータによると、北朝鮮は耕作状況が最もよかった頃でも食糧生産量は僅かに国内需求の六十~七十%しか満たせず、不足分は輸入に頼らなければなりませんでした。全国の二十四%の土地は耕作に適していますが、頻繁に災害が起きたため、耕地面積は十五%に縮減されました。

谷山郡平岩里(ピョンアムリ)を訪れました。眼前に広がる黄金の波、爽やかな風がそよぎ、豊かな農村の風景です。

慈済ボランティアは田に下りて細かく見ました。稲穂のほとんどが枯穂(かれほ)で、当地の役人はこれは稲熱病(いもちびょう)と台風の影響だと説明しました。そのため農作物の収穫は昨年よりも五十~七十%の減少となりました。

二カ月前の台風による豪雨は、谷山郡青松里(チョンソンリ)の共同農場百三十ヘクタールの田畑を水浸しにし、その水は未だに退いていません。山にかこまれた地形で堰止(せきと)め湖を形成しています。当地の役人の話によれば、あと一カ月経たなければ水は完全に退かないとのことです。なぜ大きな排水口を造って排水させないのかと聞くと、「排水口を造る重機がない」と答えるのでした。

収穫が減ることは食糧の配給量も相対的に減少することです。自然災害は、もともといつ終わるか分からない食糧不足の困難な期間を、さらに長びかせることになりました。

青松里に住む四十六歳の鄭泰義(ゾンテェイ)は、小舟で堰止め湖に出かけて水中に埋もれたトウモロコシを拾って庭で干し、備蓄しようと考えました。しかし水に浸った後のトウモロコシは、日にさらしたものの酸っぱい味がとれません。「食べられる?」と聞くと、「当然!」と当地の役人はきっぱり言うのでした。



三日間で慈済ボランティアは二道四郡を巡り、二十二の案件を調査ました。状況はほとんど似通ったもので、努力して耕耘しているがやはり足りなく、食糧不足は栄養不良を引き起こし、生活の質と健康を害しています。

私たちは麟山郡で二十九歳の韓明琴(ハンミョンクン)を訪問しました。保育園の先生を務める彼女は、初産を終えてちょうど育児休暇中で、幸せに溢れた様子でした。

韓明琴はご主人の宋江南(ソンカンナン)と姑、それに生まれたばかりの娘の一家四人で暮らしています。一家には一日分の食糧として雑穀が四百グラム分配されます。それに自分で植えたわずかばかりのトウモロコシとジャガイモを加えれば、何とか生きていけます。この非常時では幸せな方です。

韓明琴の住居は広くありません。少し古びた感じで、これというほどの家具もありませんが、明るく清潔です。目のつきやすい壁に二枚の肖像がかけてありました。一枚は「永遠の指導者」故金日成(キムイルソン)主席で、もう一枚は現国家主席の金正日(キムジョンイル)総書記です。

二つの肖像は家の中で一番目につく場所に掲げられてあります。赤ちゃんは部屋の真中で母親の世話を受けており、外から陽光が差し込み家の中は温もりに満ちています。壁に掲げられた額に、「家和萬事成」(家庭の仲がよければすべてうまくいく)と書かれた字が目に映ります。

「家」は一般民衆の「家」であり、国家の「家」でもあり、また、世界は「一つの家」であります。この理念に則り、慈済人は必ず戻ってきます。そして近いうちにこの土地の方々に微力ながら何か尽くしたいと希望しています。


(慈済月刊五三八期より)
◎文、撮影・蕭耀華/訳・王得和

 

画像

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