片手でボール箱を回収

2010年 10月 01日 慈済基金会
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【地球と共生する】
その二・資源回収をはじめよう

山の上に片手のおばあさんが住んでいます。昼間は果樹園の仕事で忙しいのですが、それでも夜あるいは夜明けごろの時間を利用して環境保全のボランティアをしています。娘がいつも慈済のことを話すので、それがきっかけとなってボランティアを始めました。

「證厳上人は何のために資源回収をするのかしら」とおばあさんは首を傾げましたが、「ゴミを減らすことができるし、回収した資源を売ってそのお金を寄付すれば法師さまは人を救うことができるの。たいした金額ではないけど、みんなの力を集めたら、結構ばかにならないですよ」と娘が言うので、さっそく回収物を拾い始めました。

周りの人たちがおばあさんに尋ねます。
「片手でもやれますか?」
「大丈夫、やりさえすればお金になるのだから」
「それだけ拾い集めて、いくらになるの?」
「いくらでもいいですよ。みんなで力を合わせなくてはね。お金がひとりでに湧いて来やしないでしょ」

この草の根の智慧に私はいたく感じ入りました。おばあさんの真摯な態度に隣近所が感動してついてきました。拾ってきたボール箱は平らにして積み上げ、上から押さえながら梱包しなければなりません。

「片手で梱包するのはきつすぎませんか」と尋ねると、
「大丈夫、まだ二本の足があります。足で踏めばいいですから」と言って、ほかの人と同じように、平たくつぶしたボール箱をきちんと重ねていました。

健常者に負けず、てきぱきと働くおばあさんの姿を、私はVTRで見ました。目に見えない智慧の手で、持って生まれた能力を発揮し、その上近所のひとり暮らしのお年寄りの世話をしているのです。体に障害があっても心は完璧であります。

THINKING 50

片手でもボール箱をきちんと整理する
目に見えない智慧の手で
持って生まれた能力を発揮しているのだ
体に障害があっても心は完璧である

文・證厳上人/訳・慮慇