専念、細心

2016年 3月 09日 慈済基金会
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納履足跡
物事に対して心を込めて専念すれば、悩んだり煩ったりすることはないのです。



「地球の資源を大切にしなければなりません。カーボンフットプリントを削減しなければ、温暖化や環境悪化の問題が緩和できないことを知ってはいますが、それを承諾しない国がたくさんあるのです。いざという時に災害補償をするだけで、実に何にも役に立ちません」と證厳法師は屏東市庁の職員や、町内会の責任者、そして屏東の慈済ボランティアに指摘されました。慈済の環境保全がここまで成果をもたらすことができたのは、人々が「地球を愛し、資源を大切に」という理念に啓発されたからです。

「慈済が環境保全を働きかけたのも、大地の資源を大事にするとの一心です。リサイクルの再利用率を高めていけば、地球資源の消耗を減らし、環境の汚染と破壊が減少できるよう願っているのです」

ガラス瓶を回収しても利益が少ないため、回収する人が少ないのです。雲林県にある小さな村では、慈済のボランティアが毎日回収した空き瓶の重さは一千五百キロ余りにもなります。ですから、慈済が回収をしているのは利益のためではありません。故意に捨てられたガラスの空き瓶に、もし雨水が溜れば蚊などが発生して環境衛生にも悪いと思い、ボランティアが苦労を重ねて拾っているのです」

慈済が環境保全の活動を推進してからもう二十五年が経とうとしています。常に「人が捨てれば、慈済が拾い上げる」との初心に従い、やり遂げてきました。異臭を放つ、蚊やハエなどが伝染病を媒介するゴミの集収場で、数多く年配のボランティアが分類に尽くしているのを法師は不憫に思い、また皆の健康も案じておられました。そこで、一歩進んで「清浄は源から」と提唱しました。「『清浄は源から』という環境の『源』とは、各々の家庭にあるのです」。それぞれの家庭に環境保全の理念を根付かせ、人々が資源をしっかり分類すれば、環境保全はうまく徹底していけるのです。證厳法師は口調を強めて述べられました。

昨年の三月から、屏東市政府は慈済と手を組んで夜間のゴミ分類をし始めました。ある町内会の責任者は、「町内の資源回収で一家の生計をたてる人たちからは、自分の収入が目減りするのかと心配の声が上がっていましたが、ところが、回収物が分類によって逆に増えてきたため、収入も増加したのです」。ですから、環境保全を徹底的に実施すれば、生活に苦しい家庭にでも役に立つことができるのです。

證厳法師は町内会の責任者に、「町内にもし生活に困っている人がいればどうぞ申し出ていただき、慈済が検討したうえ補助をします。また独り暮らしの年配者や心身障害者でケアが必要とするならば、ボランティアが定期的に訪問します」と話されました。

心に法があれば、あらゆる道が通じる

慈済と屏東との機縁を顧みますと、それは一九六四年に遡ります。證厳法師は基隆にある海会寺での法会で惟勵法師と出合いました。それから八年経ち、證厳法師は行脚で屏東に立ち寄って東山寺の惟勵法師を訪ねました。そのご縁で圓通寺の見慧法師、見浄法師を知りました。当時圓通寺の信者に、陳栄慶さんがいらっしゃいました。陳さんは慈済の慈善済貧の宗旨を十分了解してから慈済の志業を担うことを望み、屏東で一人目の慈済委員となりました。

一九七七年、大きな台風が南部に甚大な被害をもたらしました。證厳法師は花蓮と台北の委員たちを連れて救援に駆けつけました。これにより当地との縁が深まり、慈済屏東支部が設立しました。證厳法師の後に付き従って四十年の歳月が経ちました。

「慈済人が『仏教のため、衆生のため』という仏陀の心、法師の志に基づいて奉仕していることに感謝します。これからもっと精進し、仏法を聞き心の迷いを取り去って真理を体得し、福を造ると同時に慧命を増していくよう願っています」と、證厳法師は屏東のボランティアとの会談の中で、感謝を述べられました。

「奉仕する過程に真心の愛を養い育て、また奉仕しても報いを求めずさらに感謝すべきが『覚有情』(悟り)です。実行奉仕より内心の修めに転化すれば、自ら済渡できるのです」 年末の祝福会において、幾人かの古株のボランティアはすでに白髪頭になっていましたが、道心を退くことなく堅固な意思で菩薩道を歩むことに感服しています。

ある八十歳を越えたボランティアが体験談を語りました。「花蓮慈済病院のデイケアで、私は自分より年下の患者を世話します。機縁を把握し、物事に応じて細心に奉仕しなければならないと、自ら用心するように体得したのです」。證厳法師は、「ボランティアが奉仕をする時、脳や体の働きが絶えず動いているので、健康にもよいのです」と褒め称えられました。

「物事に応じて心を込めて専念すれば、悩んだり煩ったりすることはないのです。仏法を聞かず、奉仕もしなければ、時間を無駄にします。煩悩の山を抱え持っていれば、心身の機能が衰えて弱くなるでしょう」

「日ごろ勤勉に奉仕し、さらに仏法を聞くことを忘れずに菩薩道を歩んで善の機縁を把握しましょう」と證厳法師が皆を励まされました。「仏法を心中に修めれば、煩悩を取り去ることができます。物事の筋道が透徹すれば、あらゆる道は通じるのです。意味のない苦悩を煩ったりしないように、常に歓喜心を忘れないよう願っています」


訳・心嫈
(慈済月刊五七八期より)