真夏の建築現場 汗水と雨水の試練

2010年 11月 01日 慈済基金会
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台湾大水害の後・慈済大愛団地の落成

【堅実な道路】
大愛団地の全ての道は排水のよいインターロッキングブロックで舗装されている。七月から舗装工事が始まったが、毎日午後になるとスコールが降り、ボランティアの気力が試される。ザーザーと降りしきる大雨の中、大量の人力を必要とする道路舗装の作業はさらに困難となる。

変わりやすい夏の天気にボランティアはたじろぎもせず、枋寮、佳冬、林邊、東港、新園、萬丹、小琉球、ひいては遠く恒春などの村から、「完全武装」の出で立ちで作業工具を携え、早朝から大愛団地の工事現場へ出発。高雄の各地からもボランティアが応援に馳せ参じた。夏休み中なので、学生たちが参加する姿も少なからず見える。

七十六歳の凃玉英は今年の四月十九日、屏東県高樹郷の大愛団地に引っ越して来た。奉仕に行く路上で、息子一家に偶然出会った。凃玉英と同じくインターロッキングブロックの舗装に出かけるところだった。先祖の位牌はもう新居に安置している。「大愛村に住めることをご先祖も喜んでいらっしゃるだろうかと筊(注1)を投げたら一度で聖筊(注2)が出たよ」と朗らかに笑って言う。息子は被災した後、ボランティアとして奉仕しようと考えていたので、その願いが叶ってとても嬉しいと言う。

きつい肉体労働で、女性のボランティアたちは肩や腰の痛みなどの「戦利品」を携えて家に帰り着く。しかし、二、三日したらまた奉仕に戻る。「工事が終盤に近づくと人力が必要なので、私たちはまた来ました」と。

鉄工場を経営している林啓明は工場の仕事を部下に任せて「ここに来て何日になるか忘れました。全身全霊で奉仕しています。道路の舗装も修行の一つです。急ぐことはありません」と語る。

起重機会社を経営している林春生は事業を休んで、道路の舗装に専念している。彼は二人の助手に感謝している。土木技師の頼東松と道路舗修の達人である頼松勇と三人で工事に従事している。林春生は善をつくすことは良い事であり、困難も多いが、一旦克服したら達成感も大きいと言う。頼東松も、専門家と素人とでは差があるが、一様に質の良さを求めて堅固な舗道を作り上げるのだと語る。

ボランティアの努力によって、インターロッキングブロックの舗装工事は着々と進んでいる。

文・陳潁茂、張錦雲、王翠花、郭素霞、陳虹秀、黄琳文、黄玉齡/撮影・潘明原


【背後の助太刀】
工事現場ではヘルメットはなくてはならないものだ。安全と衛生を考慮して、ボランティアは毎日ヘルメットをきれいに洗う。総務組の蔡春来は一日に百個のヘルメットを洗う。ボランティアが多い週末や休日には四、五百個以上にもなる。インターロッキングブロックを延べ千キロ以上も運んだ手袋を洗った後、太陽に干して消毒し、次のボランティアが使えるようにしている。

文・張玉梅、陳潁茂/撮影・陳潁茂


【暑さ消しの氷ぶくろ】
「皆さん、暑い中ご苦労さんです。冷たいお茶をどうぞ」。ボランティアの手から、自分の名前入りの水筒を受け取る。冷たいお茶に心までも潤わされて、建設作業員は満足した笑顔を見せる。

高雄から来たボランティアはお金を出し合って、建設作業員に水筒を贈った。巡廻車が定時刻に冷えた水筒を届けるので、捨てられるペットボトルも減った。

慈済台中病院の漢方薬部処方の「暑さ消しのお茶」をボランティアは煎じる。屏東の慈済人医会も健康センターを設立して、怪我人や胃腸障害などの急病患者の診療に当っている。

冷蔵庫の中には、ビニールの手袋に水をいれて作った氷ぶくろがある。ボランティアの蕭志忠は、「工事中によく熱中症にかかる人があります。この手袋の氷の塊を顔にあてると、まるで冷たい手が撫でてくれているようです」と語る。

「みなさんが酷暑の下で、汗水を流し、袖で汗をふいている。タオルを贈ったらどうでしょう?」と一人のボランティアが提案したら、別の一人が「そしたら名前を刺繍しないとなくしたら困るでしょう?」と。

「私は前に学生服に名前を刺繍する仕事をしていたの。私がやりましょう!」と鄭美人が引き受けて、八十二人の同郷の人たちの名前をきれいに刺繍した。

文・陳虹秀、陳美蓮、張玉梅、楊美燁/撮影・陳虹秀、王受福


【エネルギーの補給】
毎日大愛団地で奉仕をしているボランティアは二百人を超える。多い時は千人にも上る。炊事班はエネルギーの補給役をつとめる。早朝六時には厨房の仕事が始まる。年配者は野菜を洗い、若い者は野菜を切ったり、料理したおかずを弁当箱に詰めたりする。男性ボランティアは網戸を張って、蚊など虫の侵入を防ぐ。

大愛団地の付近には野菜を育てている人が多く、いつも自分の植えた野菜を皆に分けてくれる。高雄からきたコックの劉再和夫婦はプロの調理器具を携えて奉仕に来ている。

現地のボランティアで炊事班メンバーの蔡叔娥と古美貞は毎日食材を買い付ける。この酷暑では作業員はみな食欲がないので、ご飯のかわりにうどんやビーフン、餃子、ピザなどやデザートが出される。

古美貞は孫の世話をしつつ畑仕事もするほか、工事にも奉仕する。「不変の心を以て万変に応じる」精神だ。毎朝五十分かけて自転車で工事現場に行く蔡叔娥は「自分の家が建つのだと思っていますから、喜んで奉仕しますよ」と語る。

文・林美瑜/撮影・林美瑜、陳虹秀

(注1)占い用具の一種。二個で一揃え。それを地に投げて吉凶を占う。
(注2)一個表に、一個裏出る時は「聖筊」と称し、吉兆である。

訳・重安