生ゴミからできた堆肥・黒い宝が環境を護る

2010年 11月 01日 慈済基金会
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【慈済環境保全運動・20周年】

台湾の家庭から出る生ゴミの量は一日平均六千トン近くに上るが、その回収率は僅か三割である。ある慈済ボランティアグループは臭気と発生する虫に立ち向かって、三年間研究し続けた。そしてついに、鼻を覆いたくなる悪臭を放つ生ゴミの再利用の秘法が解き明かされた。嫌われ者のゴミが大地を豊かにし、野菜や果物を有機栽培する黒い宝と化した。

かつて人々の生活は大自然の恵みを受けて成り立っていた。日常のゴミは大部分は大地が吸収し循環されていた。しかし、現代社会のゴミの成分は複雑化し、それらを処理するのが益々困難になっている。埋め立てるにしろ焼却するにしろ、環境汚染を引き起こしやすい。

環境保護署の統計によれば、毎日、台湾全土で発生するゴミの中、約六千トンが生ゴミである。慈済ボランティアが資源のリサイクルを始めて二十年になるが、ゴミの中でも生ゴミの処理の難しさとその重要性を知り、その回収を始めた。

慈済台中潭子志業園区にある「生ゴミリサイクル小屋」は、正にその運動を推し進めると共に、人々に処理方法を教える最前線なのである。

ステップ1:
正確に分類してから切る

台中慈済病院の後方にある新田リサイクルセンターでは毎日、おばさんグループがプレハブの「生ゴミリサイクル小屋」で、がやがやと楽しくリサイクル作業をしている。

一般の回収品を整理する時に使う軍手や錐は、ここでは用を成さない。そこでは、まな板や包丁、キッチンばさみなど台所用品が幅を利かせている。皆、菜っ葉や果物の皮を素早く切っていた。生ゴミのリサイクルは「今日のことは今日中に」済ませなければならないのだ。

「生ゴミを回収して、そのまま積めばよいというものではなく、かなりの知識が要るのです」。三年前、新田リサイクルセンターに生ゴミリサイクル小屋ができた当初、ボランティアである林淑嬌は計画準備を始めた。「何回もの処理を経ることと時間をかけて発酵させることによって、嫌われ者のゴミが土に養分を与える有機肥料に変わるのです」と言う。

生ゴミリサイクル小屋に入るとまず、長いステンレスのテーブルに置かれた様々な生ゴミをいっぱい載せたステンレスの盆が目に入る。ボランティアたちはテーブルの両側に並び、そこから大きめの野菜の芯や菜っ葉などを選び出して、一定の大きさに切ったり、はさみで切っていた。

生ゴミを混ぜるにも法則がある。例えば、パイナップルの皮が多すぎると分解しにくいが、酵素が多く、よい香りのする有機肥料ができる。また、かたいトウモロコシの芯も五センチほどに切れば分解する。

「私たちが研究して分かったのは、生ゴミは余り細かく切ってはならず、均一に切らなければならないということです。細菌がゴミを分解する時、風通しをよくしてあげれば、速く均等に分解してくれます。また、混ぜる生ゴミの種類が多ければ多いほど良い品質の有機肥料ができるのです」と林淑嬌が言った。

ステップ2:
一段ずつ層に積み重ね
発酵するのを待つ

新田リサイクルセンターの生ゴミは潭子園区、台中支部、豊原静思堂などから出たものである。各施設の食事係のボランティアは、生のものと煮たものを分けて収集し、水分を抜いておく。そこから堆肥にするステップに入る。

小屋の後の方には四列の棚が設けられてあり、百個近い同じ大きさの緑色のポリバケツが並んでいる。バケツの下の方には水抜き用の栓が取りつけられてある。ボランティアが菜っ葉などを切ってから、貯蔵場で空のバケツを選定する。そこから第二ステップに入る。

まず、バケツの底に網を敷き、分解用菌類ともみ殻を入れ、その上に切った生ゴミを入れる。層にして積み重ね、全てのものが化学反応を起こすようにする。

台中市北屯地区の環境保全担当の劉品君は、「もみ殻と活性菌は農協から仕入れてきます。その二つを一対二の比率で混ぜ合わせてから、バケツに五センチの厚さで入れ、その上に均一に生ゴミをのせます。そのようにしてサンドイッチ状に積み重ねていき、一番上に厚めに菌類ともみ殻をのせます」と詳しく説明してくれた。

一層ずつのせていく時にも技術的に注意する必要がある。例えば、生ものと調理済みのものを分け、生ものを三から五センチの厚さで一番下に入れ、次の層は調理したものを敷き、その上にまた生ものの層を敷く。調理したものが多い場合、含有水分が多いので、必要となる菌も多くなる。こういう秘訣は皆、ボランティアらが経験から得た知識である。

完成したバケツの通し番号と日付を記録し、四日後に水抜きしてから液肥を抜き取る。そして、三カ月後に有機肥料ができあがる。

ステップ3:
液体肥料を抜いてから
黒い宝を取り出す

生ゴミを何層にも積み重ねたバケツに蓋をする必要はない。風通しがよくて日光が当たる場所に置けばよい。毎日、日光と風に当たっていれば、一月以内に小さな苗に成長する。それは生態に良い状態だということである。

四日後には液肥が採取できる。供給が需要に追いつかない。「毎日、電話がかかってきます。液体肥料は効果てきめんのパイプ清浄液だからです」

劉品君によれば、ある人の会社のトイレが詰まって、水道修理の人も手に負えず、掘り起こすしかないと言われた時、何でも試してやれ、という気持ちでその液体肥料を流したら、しばらくしたらトイレが流れるようになったという。高価な修理費を節約したばかりでなく、面倒な工事もしなくて済んだのだ。

水で薄めていない有機液体肥料はパイプをきれいにする。化学薬品でパイプをもろくすることもなく、下水を汚染することもない。それに黒砂糖水を混ぜ、一対三百の比率で水に薄めれば、無臭で最良の有機液体肥料のできあがりである。

「黒砂糖水は液体肥料の臭いを抑えると同時に発酵を促し、より養分の多い液体肥料ができます。混ぜてから二十一日後には高品質の液体肥料ができあがります」と劉品君が言った。

三カ月後にできるサクサクした黒褐色の有機肥料は、長い間、化学肥料を使用してきた土地に生気を取り戻させる。それを使って育てた野菜は大きくて健康なのが特徴である。生ゴミリサイクル小屋の側にある小さな野菜畑でその成果を見ることができる。

林淑嬌は満面の微笑みを浮かべて、「この野菜畑は私たちの最良の宣伝となっています。それは、有機肥料の成功と菜食の厨房から出た生ゴミによる有機肥料には最高の養分があるのと同時に、地球に優しいことを物語っています」と言った。

常駐ボランティアが経験を伝える
新田リサイクルセンターは二〇〇七年四月一日から生ゴミの回収運動を始めた。三年余りでその成果が現れた。林淑嬌と劉品君の功績は決して小さくなく、宣伝と教育の使命を担っている。

「リサイクルを長くやっていると、生ゴミのゴミに占める割合が非常に高いのに気づきます。当初、設置する場所の問題で、生ゴミから堆肥を作ることで悪臭が出るのを恐れて、行動に移すのが延び延びになっていました。後に、潭子園区の中に今の場所があると知り、皆が私に計画してほしいと言ってきたのです」と林淑嬌が言った。

昔の人は生ゴミを豚や家畜の餌にし、育った家畜を食用に殺していた。しかし、現代社会の生ゴミはもっと「生命を守る」という理想に近づいてもよいのでは、と林淑嬌は思っている。

「生ゴミから堆肥を作り、最良の有機肥料として有機野菜を栽培することができます。液体肥料は下水管を掃除するものの中でも最良のもので、脱臭作用もあります。また、植物性の廃油からはリサイクル石鹸を作ることができます。用無しだったものが大いにその効用を発揮しているのです」

劉品君は当初の試験段階のことを語ってくれた。「初めは経験がなく、最初の半年間に作ったものは全て失敗しました。悪臭が辺りを満たしたばかりでなく、びっくりするほど大量の虫が発生し、ボランティアたちは足がすくんでしまいました。初めてセンターに入った人は皆、臭いと言いましたが、私は臭いが気になりませんでした」。

何度も何度も実験を繰り返して、バケツに蓋をしない方が虫が湧かないことを発見した。そして、発酵する過程では乾燥を保ち雨に濡れてはいけない、などなど。試行錯誤するうちに、少しずつ成果が現れてきた。

新田リサイクルセンターでは、一般のリサイクルと同様、生ゴミのリサイクルに休みはない。とくに生ゴミは腐敗しやすく、時間とバケツの数量を管理する上で特別に注意を払う必要がある。また、ボランティアの労力配分も難しい問題である。

台中各地から来る当直のボランティアを教育するために、林淑嬌と劉品君はリサイクル小屋の常駐ボランティアになっている。生ゴミの切り方からバケツへの入れ方、液体肥料の抜き取りと薄め方、有機肥料の収集の仕方など細心に教育している。

管理しやすくするために、林淑嬌は全てのバケツに通し番号を貼った。毎日、どのバケツに入れ、どのバケツから液肥を抜くかをノートに詳しく記録し、当直者が一目で分かるようにした。また、彼女は赤い札を作って、毎日、生ゴミを入れるべきバケツの上につけ、すぐに分かるようにしている。

多くのボランティアは、生ゴミでリサイクルするという発想に初めて触れる。「汚い、臭い、疲れることを嫌う人はここで頭を切り替え、地球を護るためにゴミの減量を行うことから第一歩を踏み出せばいいのです。裕福な家庭に育ち、節約することを知らない子どもたちも一通り見てから自分の手でやってみれば、食べ物を無駄にしないことを学べます。この理念を堅持して行動を続ければ、心の悩みも消えます」と林淑嬌は笑った。

また、彼女はよく證厳上人さまの言葉を引用しながら説明をする。「やる気があって熱心に奉仕すれば、一時の志を永遠のものに変えることができます」、「生ゴミのリサイクルでは、まず菜っ葉や果物の皮を切ります。大きすぎても、小さすぎてもいけません。人間として中道の道を歩むことが一番良いのと同じです。さもなければ、『僅かな差が千里を失う』ことになります」、「生ゴミのリサイクルに休みはありません。『今この一瞬を大事にし、僅かな時間も浪費せず、着実に歩みを続ける』ことです」。



この三年余り、各地のボランティアはここで学んだ経験を持ち帰り、それぞれのリサイクルセンターで生ゴミのリサイクルを始めている。例えば、台中東大園区や台北の板橋園区などで生ゴミのリサイクルが始まっており、役に立たないものを役に立つものに変え、大地に養分を与えている。

実のところ、政府は二〇〇一年という早い時期から生ゴミの回収を行なっている。今では、全台湾のゴミ収集車に生ゴミ回収用のバケツが設置されている。それらは飼料や有機肥料の原料に使われている。

「台湾では一年間に二百万トン余りの生ゴミが発生し、回収されているのはその三割に過ぎません。皆が手を動かせば、環境への負荷を軽減することができます。地球を愛するには自分から行動しなければなりません」と林淑嬌は心から期待している。

生ゴミリサイクルの本意は料理の過程で出た要らないものを回収することであり、食べ残しのご飯やおかずではない。「食べる分だけ料理し、健康を考えることが一番です。決して食べ物を無駄にして、大量の生ゴミを発生させてはいけません。これこそが環境保全という考え方なのです」


慈済月刊五二四期より
文・賴怡伶/訳・済運