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12月04日
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ホーム 證厳上人 衲履足跡 煩悩という「賊」を滅ぼす

煩悩という「賊」を滅ぼす

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【衲履足跡】
煩悩は賊のごとく心の宝を盗む

心も念も正しくしてこそ
心に潜む魔を滅ぼせる
「清浄な本性は心の内に存在しています。習慣も同じです。良くない習慣をやめなければ、仏について修行できなくなり、覚悟することもできません」。一念が成仏の因をつくるのと同じく、六道輪廻の因にもなります。修行とは心の修行を目的とします。常に仏法を心の内に銘記して、人格の向上に励みましょう。

「徳は修行しなければ得られません。仏さまの弟子は仏法僧の三宝を修行の目標にして学びます。衆生も仏と同等の清浄な本性と智慧を持っていることを知ったからには、なおさら積もり積もった過去世の良くない習性を改めて、正道に戻るべきです」

悪い習慣を克服するのは難しいとよく言われます。しかし悪い習慣は、生まれつきのものではありません。知らず知らずの内に積もり積もったものです。「もしも常に善知識に接することができたら、自然に良い影響を受けて、内心を修正、念も行動も、正道に戻ることができます」。

「修行というのは自分を修めることがいちばん大事です。無明がおきないように、常に反省するなら、過去の習性は改められます。凡夫の心を修行で改めることができたら、仏の心に近づき、菩薩道を行くことができるのです」と、法師さまの励ましのお言葉です。

習性を改めると同時に、慈悲心で人に奉仕して、智慧を増やすことに努力すべきです。「仏法が耳に入っても、自分の習性を改めず、徳も学ばず、精進にも努力しない人は、仏に学んでいると口で言うだけで、心の内に入れません。仏の教えを宝物として心の奥深くに銘記すべきです」。

例え三宝(仏教における三つの宝。仏法僧のこと)が智慧の糧を途切れることなく提供しても、煩悩は賊のように絶えず智慧を盗み、修行の糧はことごとく失せます。「煩悩は賊のように心の宝を盗むので、衆生はねばり強い意思の力を発揮して賊を滅ぼさなければなりません。思いも行為も正しくしてから初めて心に潜む魔が消えます。悪い念を矯正したならば、再び煩悩に脅かされることはないでしょう」。

智慧と意力で
かたくなな人を説き伏せる

人間菩薩は自分の煩悩を解消するだけではなく、さらに勇気をふるい立たせて、慈悲と智慧を生かして暗闇の中に灯りを点し、希望に導きます。

南アフリカの慈済志業は一九九二年に始まりました。十七年このかた、貧しい人を援助し、教育を普遍化させました。最近、慈済人はレディスミスで環境保全活動を指導しました。遥かな南アフリカの弟子たちが慈悲と愛で、当地の人々にこの地球を保護する思想を培い、心の浄化、社会の安定に努力していることを法師さまがお褒めになりました。

「過去の南アフリカは、種族同士が対立し争いの多い土地でした。慈済人は苦労をいとわず、危険をもおそれずに、貧困地区に深く入り込んで、援助しました。無私の愛がかたくなな住民を説き伏せました。ゆるがない意志で積極的に奉仕するボランティアに感化された人々の心の内に、愛の灯火は点されて、南アフリカ人ボランティアが現れました」

南アフリカではリサイクルは貧しい人の仕事だと思われています。一昨年、慈済人がレディスミスで、環境保全というのは、ゴミを黄金に変えること、環境を美化し地球を愛することだと説明しました。よく理解できないまま、住民たちはリサイクルするのを躊躇していました。ズール族の慈済委員メミスは辛抱強くブルーバンク団地の住民に何度も説明し、ついに人々を説得しました。こうしてみなが納得してリサイクル作業を始めました。

昨年の六月、慈済人は例年どおりにブルーバンク団地に行き、冬季配布を行いました。慈済人の説明で、配布物資の一部は資源回収から出た金で買ったのを知って、住民たちは大変感動しました。ただ慈済に頼っているだけではいけないと、住民は積極的に行動に移して、廃品回収をしていくことを決心しました。今、レディスミスでは四つの団地と二つの小学校が慈済のリサイクル活動に参加しています。

慈済人が智慧を発揮して、住民たちに環境保全の大切さを教えました。資源回収による収入でもっと貧しい人を助けることができることを自らの体験で知った人々は、自発的に奉仕に参加するようになりました。一つの小さな善念が自然に啓発されたのでした。

「仏の愛で群衆の中に入り、ただ富者を教育して貧者を援助するだけではなく、貧者の心霊を豊かにしてあげましょう。貧しい人たちに自分も力を出して人を助けることができ、大地を保護できることを知らせましょう」

過去、ブルーバンク団地は警察さえも近寄りたがらない暴動の多い危険な地域でした。慈済人や当地のボランテイアが長期的に奉仕するうちに、住民たちは悪習を改め、資源回収で道路もきれいになりました。南アフリカの慈済人は、数が少ない上に劣悪な環境の中で、菩薩のような智慧と意志をもって、暗闇の中に希望の灯火を点しました。

「天下に教えられない人、正しく導かれない人はいないと信じています。例え心霊が暗黒でも智慧の灯火を点したら、心の部屋は必ず明るくなります」と、法師さまのお言葉です。

慈済月刊五一七期より
文・釋徳(亻凡)/訳・慈憙