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04月20日
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『感恩』の文化

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【納履足跡】
奉仕すると同時に相手に感謝する心がまえでいると、見返りを求めない奉仕を行うことの歓喜に浸ることができ、心霊は軽安自在です。

慈は心の苦をのぞき、
悲の心で慰め励まします。


台中市豊原区に住む夫妻がいます。夫が五十三歳、妻は三十七歳で、八人の子供を養育しています。年齢の一番大きい子は十六歳、末の子は五カ月で、経営する車床加工工場に住んでいます。妻はインドネシア籍で、言語、文化、生活習慣が異なる台湾の社会に馴染めず家に引きこもりがちで、子供の教育や衛生習慣をおろそかにしました。幼稚園へも汚れた服を着て通園し、体は不潔で異臭を漂わせているので、教師は何度も親と話しあいましたが、一向に改善されませんでした。困りはてた先生が昨年十一月、慈済に協力を求めてきたのでした。

慈済人が初めて一家を訪問したとき、家の中は汚く乱雑でした。そこらじゅうに物が積み重ねられ、子供たちはそこかしこで大小便をします。お風呂に入ることも少ない様子で、その場で寝るために体は尿のにおいにまみれています。腹がすいたら手づかみでご飯やおかずを食べます。衛生の常識も教養もないありさまの、かわいそうな一家です。ボランティアは毎月訪問して、 母親と話しあいました。やっとのことで、まず子供たちの生活環境を整えることに同意しました。昨年十二月、同村の十数人のボランティアが協力して清掃しました。腐爛した板床をはがして、新しい床をはりました。ふとんや回収した衣類をあげ、ふとんの畳み方を子供たちに教え、良い習慣を身に着けるように励ましました。ボランティアたちの熱心な奉仕に感激して、母親は警戒心をとき、家屋全体の修繕に同意しました。子供たちもみなよく進歩しました。先日訪問したとき、子供たちは拍手で歓迎し、「毎日自分でふとんを畳んでいるよ」と大喜びでボランティアたちに報告しました。片づけや掃除の習慣も身に付き、 母親も家事をするようになりました。

「感恩」という一言には深い意味が含まれています。この句は慈済人の心の修養を示すもので、慈済の人文です。「感恩」という言葉は礼儀上の常用語であるだけではなく、「皆が奉仕を行う中で滞ることなく、自分の心を浄化すれば、心霊は軽安自在です。奉仕の機会を与えてくれた方への心からのお礼の言葉です」

「無縁の大慈、同体の大悲」といいます。奉仕を行う相手の方とは縁もゆかりもない見知らぬ人です。ですが、自ら喜んで汚れた環境に入り、整理、清掃してあげます。「慈」で苦難を除く心、「悲」の心がまえは、人々を家族と見なして、大愛でいたわり、世話する人は正に人間菩薩です。持続的に大衆を励まし、皆の愛の心を呼びさまし、愛と善の心が増強することを法師さまは期待しておられます。

宗門と法脈は二本の轍

『無量義経』にこうあります。「水は身近で種々の用途があります。江、河、井、池、渓、海は、それぞれ違った功能があり、法性も異なります。塵や汚れを洗いおとす功能は水とかわりません」。異なる宗教は自ずと名称も違い、また、組織形態も異なります。ところが発心の大本は、同じく大愛から出発しています。奉仕して見返りを求めない広大な心がけは同じです。イスラム教、キリスト教、カソリック教は、慈済に入り込み共に奉仕ができます。共に天下の一大事を担い、群衆に分け入って衆生を度します。

静思法脈は、『勤行道』で精進の行動、内心は『誠正信実』を修得します。慈済法門は『人間路』で修行、民衆に分け入って『慈悲喜捨』の奉仕を実行します。まるで、汽車が走る轍のようで、必ず平行に共に進まなければなりません」

「静思法脈勤行道」は単純、清浄な心で、内的な誠正信実を修めて、人の中に分け入って愛の奉仕を行い、事理に明るく、仏法を信じ、仏に対して敬虔な態度で真心込めて信心を固く持ちます。「三十七助道品」の中の八正道(註)は、仏教を学ぶ人たちの基礎観念を固めます。「信」は修行の大本営で、功徳の母とも言います。必ず正信の仏教をまなび、偏ることなく実に深い信念で心して学び、迷信や妄想にまどわされません。

今年五月、釈迦誕生祭、母の日、慈済の日の三大節句を合わせてお祝いする潅仏会を行うようにと、全世界の慈済人に呼びかけました。人々は浴仏と同時に各自の心を清めて精進し、清浄な仏性に近づきます。すなわち、「誠意方殷、諸仏現全身」、万人がおれば万仏になることになります。人々が合心、合気、相互に協力して初めて荘厳な法会が成功します。

「今の時代に法を広めるには科学技術の助けを必要とします。法師のお話をきくだけでなく、自らこの世の真理を悟つて法に浸り、法を実行するべきです」。精進、精進、さらに精進! 地域の衆生を導いて「法海」に入りましょう。法の船が地球村の衆生を度せるように努力しましょう。一人増えればそれだけ救済の力が増すことになるのですから。

註:八正道ー正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念、正定

◎文・釋徳(亻凡)/訳・慈憙
 

" 人はとかく偏った一念のために、愛し合い助け合う人生を捨てて、奪い合い憎み合い傷つけ合う人生を貪る。その原因はと言えば、名利や快楽を貪り、己の清浄なる本性を覆いかぶせてしまったからに外ならない。 "
静思語