
一月八日、ヨルダンの首都アンマン(Amman)が豪雨と雹の災害に遭いました。慈濟ヨルダン支部のボランティア達は救済物資を配付する為に、長い間難民達を支援してきたイスラム教慈善団体のアルタカフルと協議をし、その結果、第一回目の配付を一月十二日に決めました。
ボランティア達を乗せたバスが目的地に向かっている途中で、慈濟ヨルダン支部の責任者陳秋華が「私達はただ衣服を配りに行くのではなく、台湾人の善意を伝えに行くのです。みなさんは上人の手、足として働くことを忘れないで下さい。」とメンバーを喚起しました。

ジュナブ、ハマドさんの家族はヨルダンに来て十一ヶ月になり、ちょうど手元のお金が底を尽いてきたところに、台湾からの支援物が配付され、とても感謝しておりました。「主人はシリアの戦場で戦っているし、私は子供と孫の面倒を見ながら、家族の生活を一所懸命にやり繰りしていたが、今は光熱費さえ払えない状況です。是非、台湾の寄付者の方々に私の感謝の気持ちをお伝い下さい。」と語っていました。難民たちが防寒着を抱えて満面の笑みで「有難う!台湾。」と言葉を残し、満足そうに会場から離れました。

ヨルダンの町の大半は地中海型の「夏は高温乾燥、冬は温暖湿潤という気候です。例年、年末に雨や雪の日が多い為、證嚴法師が難民達の越冬の辛さを案じ、昨年の十月頃から防寒着を寄付する様に、慈濟人に呼びかけました。十八万着の防寒着を入れた六つのコンテンナが、年末にヨルダンのアカバ(Aqaba)港に到着しました。ボランティアたちは十二月二十九日から三日間で、三千五百二十一世帯の難民家族に、食料と日用品を配布しました。豆の缶詰やトマトケチャップ、スパゲッティ、お茶、石鹸等を入れた袋は避難所暮らしの難民にとって、何よりも有難いものでした。
今回の配付活動の為にアイルランドから駆けつけた慈濟メンバー呉嘉萊が、ヨルダン国籍ボランティア・アビールの通訳を介して、「上人の心はいつも皆さんと一緒にいます。皆さんは絶対にこの困難を乗り越えられると私達はそう信じております。」と難民達に世界中の慈濟人からの愛と善意を伝えました。配付する時は、陳秋華の「礼」の合図と共に、ボランティア達が上半身を九十度曲げ、支援物資を難民達に手渡しました。
十五年に亘り 遊牧民族と難民を支援
一九九七年に数人の台湾人によって発足した慈濟ヨルダン支部において、委員に認証されたボランティアメンバー中、陳秋華夫婦と陳得雄夫婦と黄恵珍の五名以外は地元の方です。十五年前から貧困層の支援活動を黙々と行っていました。支援対象は、年老いた華僑から砂漠で生活している遊牧民族、パレスチナからヨルダンに逃げてきた難民達など、今はシリアからの難民達を対象として支援しております。
アンマンの高地のアドン(Abdoun)区は人々が憧れる高級住宅地であるが、一方、谷底のワティアドン(Wadi Abdoun)は貧困層エリアです。約十年前から慈濟ボランティアが二ヶ月に一度、ここに住む少数住民に対して炊き出しを行ってきました。主食は温かいご飯に豆ソースをかけたもの、サイドメニューにオレンジやバナナ、ジュース、さらにパンとケーキを用意しました。

ワティアドン地区の物資配付終了後、一月四日と五日に、ボランティア達は続けて南の砂漠地帯に散在する部落サグラ(Al Thaghrah)、アバシー(Al Abasyiah)、ワティフナン(Wadi Feynan)を訪れました。
部落のリーダーアブ・バク氏が二百人の住民を代表して、慈濟ボランティアをテントに招きいれ、「配付活動をなさらなくても皆さんを友人として歓迎します。」と述べました。
山の麓にあるワティフナン部落の子供達に、新年のプレゼントとして文房具を渡しました。元教師のアマド・オタト氏は「この文房具は子供達にとって、最高のプレゼントです。この辺には商店がないので、子供たちはいつもアカパまで買い物に行かなければなりません。」と嬉しそうに語りました。
物資配付活動を終えた後に部落リーダーアブ・カリ氏の自宅に招かれました。「三年前、部落の皆さんが慈濟貯金箱に入れてくれた四十一ヨルダンドルを慈濟ヨルダン支部に寄付しました。」と嬉しそうに領収書を見せてくださいました。別れ際に、ヨルダン支部のボランティアアブ・トーマスが新しい貯金箱を渡し、善意の貯金を継続して欲しいとお願いしました。
慈濟ヨルダン支部のボランティアは三十名足らずのメンバーですが、昨年のクリスマス後からシリア難民達に支援物資の配布活動を始め、ヨルダン南部の部落を訪問し、一月十二日から十四日までに、二千百七十九世帯のシリア難民に支援物資を配布しました。これからもヨルダン支部のボランティア達は衣服やエコ毛布の配布活動を続けると共に、シリア難民キャンプにある診療所に薬品と食料品などの物資を支援する予定です。
アンマンやアカバなどに散在しているシリア難民の人数は数十万人とされていますが、今までに慈濟ボランティア達の支援を受けている人数はほんの一部だけでした。これからは支援の手を少しずつ広げていくことを志しています。
慈済月刊544期より抜粋
写真/蕭耀華
訳/ 藤村淑子
校正/長堀里子‧Isa