【納履足跡】
心を広げれば人を済度することができる、物事に信実を以て対応すればやり遂げることができるのです。
世の中を心して見よう
「インターネットによってありとあらゆる情報が手に入ると思っている人はたくさんいます。ただし、物事の表面を見るだけでは、智慧を働かせて道理を深く理解することができません。知識については豊富なようですが、智慧微弱の現象が実に心配でなりません」 と上人はおっしゃいました。
朝会の時間に、上人は、 「物事を明瞭にしないままで欲念に駆られ、 またその波にのまれて流されている人も少なくないようです。昔の人々は農業をしながら簡単で質素な生活をしていました。素朴な人柄で倫理道徳をしっかり守り、 長幼の序があり、 お互いに礼儀正しく人情溢れる社会でした。現代社会では、 科学技術の発達につれて、 情報の伝達が迅速になりました。若い世代は知識や情報などが容易に入手できますが、 科学技術をめぐる道徳や社会にもたらす倫理的な問題が無視されがちのようです」 と指摘なさいました。
慈済青年部幹部養成キャンプ会場で、 国内外からの約二百人を前に、 そしてテレビ会議により花蓮及び台南の慈済中学校の教師と生徒たちに、上人は話されました。 「若い人の心は、パソコンやインターネットの 『網』 にとらわれて無明の網にからまれています。それは心が深く苦しい状態に陥るだけでなく、 家庭や社会の平穏にも影響がでるのです」
「人間は生まれてからすぐ環境に負担をかけています。環境悪化の原因について、 じっくり考えみると、 それは現代人の暮らしが贅沢になりすぎて大地に度を越した破壊を及ぼし、 それが環境を汚染してしまったことは言うまでもありません。 ですから地水火風といった四大不調和の現象が生じたのです」
「『大地を護り資源を大切に』 と子供に導き教えるべきです。人間は必ずしも海外へ出て自分の視野や見聞を広めればよいわけではありません。日ごろ心して人や物事に対応した場合に、 その接した人、 事、 物の中をさがし求めれば智慧が得られます」と上人は期待されています。
心を一つにすればやり遂げることができる
大陸蘇州の慈済ボランティアとの談話において、上人は、 「人と接するには寛容さをもちたいものです。心を広く開ければ、 人を済度したり、 引率したりすることができます。組織の構成がしっかりしていることよりも、 団体に属する同志が心を一つにすることの方がもっと大事です。 お互いに尊重し合って心を一つにすれば何事もやり遂げられるのです」とお諭しになりました。
慈済の道場はより多くの衆生を迎えるため常に開いています。人が多く集まればなすべきことも増え、 もちろん物事に対する見解も複雑になります。 ボランティアを引率することは容易ではありませんが、無理矢理に人を動かしてはなりません。
「ボランティアというのは、自発的で人のために熱い思いを込めて喜んで実践することなのです。 無理矢理に押し通してはいけません。 人に不快な気持ちをつのらせると仲間の中に悶着が生じやすいのです」
「人が楽しくて、心地よくボランティアの活動に引き込まれるキーワードとは、 『誠』です」 。上人は、 環境保全のボランティアを例にしました。 環境保全の重要性を彼らに確実に認識してもらい、 そして「責任や使命感」という思いを働かせながら全力投入ができるのです。 いくら苦労しても甘んじて心の中に意義のあることを実感したに違いありません。
「慈悲喜捨の思いを基として広い愛の心を持ち、地元で熱心な心のあるボランティアたちを引導しながら慈善の基礎を深く固めるよう努めましょう。そして喜んで奉仕に尽くし、 甘んじて受け止めましょう」と上人はみなを励まされました。
訳・心嫈
(慈済月刊五八五期より)