慈濟日本支部は、二〇一七年四月、町田デザイン専門学校の学生を対象とし、第一期の新芽奨学金を給付した。「慈濟の母さん」は、思いやりの精神で寄り添い見守ってきたこの短い一年間に、子ども達の汗と笑い、涙を見た。初めて会ったとき内気だった彼らは、活動に参加していくなかで、「慈濟の母さん」に心を開いていった。これは愛の一滴一滴が育んだ新芽である。
豊かな国にも勉学に支援を必要とする子どもたち
豊かな国であっても存在する暗部には、いまだに生活に苦しむ貧困家庭がある。この新芽奨学生は、半数以上がひとり親の家庭で育った。子ども達は、複数のアルバイトを掛け持ちしてやっと学費と生活費を稼ぐことができた。友だちと遊んだりする余裕もなく、夜勤バイトをしなければならない子どももいて、学業に専念することができない。病気やけがをしても医療費も払えず、医薬品を買うお金もない。日本支部は学校と審査チームの審査を経て、返還義務のない給付型奨学金を提供し、子どもたちが学業に専念できるようにした。そして、その子どもたちは、街の掃除や夜回り、家庭訪問などの慈濟の慈善活動に参加し、世間には多くの助けが必要とする人がいるという事実を知ることができたのである。
愛のフィードバックとなる成果展
二月二十六日から三日間、新芽奨学生の卒業展示会である産学展が開催された。産学展では各人が丹念に制作した作品が展示され、校長賞を授業した学生もあり、非常に喜ばしい。産学展をサポートするために、日本支部は台湾料理の蘿蔔糕(大根餅)を提供し、奨学生達がバザーで販売した。ボランティアは事前に子どもたちに、蘿蔔糕の作り方を指導した。売上金は花蓮の震災からの復興のための義援金となった。慈悲の心から始まった活動で、蘿蔔糕は学生達の心からのフィードバックと言えよう。
感動を分け合った謝恩会
二十一日、学校に教室を提供していただき、日本支部は十三人の新芽奨学生卒業記念お茶会を開催した。ボランティアは心を込めた精進料理とおやつを作り、新芽奨学生と先生方とが一堂に会し、子ども達が仕事を見つけ、学校を卒業して社会人としての新生活をはじめることを喜びお祝いしたのであった。
井上理事長は、まず中国語で慈濟に感謝の意を表し、慈濟が提供した新芽奨学金により、子ども達が安心して順調に学業を終了できたことに感謝した。子ども達もこの喜びを分かち合った。慈濟に触れて以降、慈濟人は彼らの両親と同じ愛情を注ぎ、美味しい精進料理を作ってくれたことなどを含め、喜びを分かち合った。この奨学金がなかったら、彼らは毎日アルバイトをして、朝早く起きることもできず、授業に遅刻したり、卒業が遅れたりしただろう。奨学金により、彼らは自分の時間を管理することができ、それにより順調に卒業でき、適した仕事を探すことができたのである。
ボランティア活動により人生の苦しみを知る
奨学金生はこの一年の内で休みがあれば、街の清掃、物資の配給、夜回り、家庭訪問などボランティア活動に参加した。寒風酷暑をものともせず、早起きして一時間以上バスに乗って日本支部に集まった。ボランティア体験により、自分たちよりもさらに苦しんでいる人たちがいることを知り、人助けに進んで両手を差し出し、自分たちの能力の存在に気付いた。これこそ人助けの楽しさである。子ども達は社会に出た後も、時間を見つけてボランティア活動を続けていくことを希望した。慈濟は彼らにとって第二の家である。その場にいた先生もまた涙を禁じ得なかった。
謝恩会はリラックスした雰囲気で進行し、皆の一年間のボランティア活動は音楽やナレーションを加えて編集され、見た人がみんな笑顔になる映画となった。執行長 許麗香の挨拶:「本日は自分の息子や娘が卒業するような心境で、このお茶会を設けました。新芽奨学金を提供するまで、計画に一年半ほど費やしました。ありがたいことに学校のご協力を得ることができ、計画を完成させることができたのです。面接の時を思い出すと、面接に来た学生はとても緊張していましたが、実は、私たちも非常に緊張していたのです。後に慈濟の計画に従い、学生達にボランティア活動に参加するように求めました。学生達は、活動に参加してすぐに、老人ホームの老人や町のホームレスに寄り添い、また重い配給物資を運ぶのを手伝ってくれました。街のゴミを減らすために真剣に清掃する姿に、人々は感動しました。奨学生の皆さんは、社会に出ても,困ったことや相談したいことがあれば、いつでも慈濟に帰って来て私たちに相談してください。慈濟はあなたたちの家なのです」
「慈濟のお母さん」河村吉美も,子ども達の心の声に耳を傾け、子ども達のこの一年間の変化と成長を見て深く感動した。ボランティアの杉山真由美女史は、自分もひとり親家庭で、子供は大学を卒業したら数百万円の学資ローンを二十年かけて返済しても重い負担であり、慈濟が提供する新芽奨学金を支持し肯定していると分かち合いました。
慈善活動は絶えず大きな成果をもたらす
子どもは未来の希望であり、学業を援助する慈善の道は、絶えず継続していかなければならない。その影響は奨学金を受け取る学生のみならず、家族や友人にまで及ぶ。家族はボランティア活動の参加に興味を持ち、子ども達と話をする共通の話題が増え、親子関係が深まった。慈善の路は、小さな芽から花となり、より多くの人々の協力を必要とする様になる。この慈悲の力を信じることは、社会は豊かに発展させ安定させる力を信じることなのである。
訳/岩村益典.文/河村吉美