南投県鹿谷にある蘇さんの家を訪ねたところ、博翊君はちょうど台所で茶碗を洗っていました。
十年前に法師さまのお写真を撮った坊やはもう立派に成長していました。上品な顔立ちの頬に二つのえくぼ、気立てのよいおとなしい青年になりました。
鹿谷小学校を卒業後、博翊君は故郷を離れて花蓮にある慈済中学校で勉強することにしました。後に国立の高雄料理専門学校に合格しました。今年十七歳の博翊君は九月から二年生です。
休日で家にいるとき、博翊君はいつも夜明けに起きて、あたりがまだ薄暗いうちに、両親と一緒に茶畑や田んぼへ行って、肥料を運んだり、施したりします。農作物の取り入れ、荷造りなどもして、一所懸命農業の仕事を手伝っています。
博翊君の両親はニコニコしながらこう言いました。「親を心配させない子が一番幸せな子になれるんですよ。心の優しい博翊がいてくれるからこそ、私達夫婦は慈済のボランティアになれたのです」。
十年前、博翊君が法師さまを撮影する時に使ったカメラは、今も大切に保管しています。博翊君がお母さんと肩を寄せあい、母校の鹿谷小学校の校内を散歩している姿は、まるで十年前、法師さまが博翊君の手を引いて希望工程を視察していた時のようです。
十年という歳月は決して短くありません。青年になった博翊君が畑でてきぱきと仕事をしている姿を見て、この心の優しい子、そしてまじめで、単純な心を持つ子は、今も変わっていないと私は思っています。
慈済月刊五一三期より
文・卜堉慈/訳・瑞華